トラック(運送業界)の規制緩和のメリットとデメリットは?働き方改革についても解説
トラックをはじめとする運送業界は、物流システムの拡大や発展に伴い、人材不足が問題視されてきています。
2020年には東京オリンピックが開催されますし、規制が緩和されると業務が軽減されるのか、それとも今よりも多忙になるのか気になっている人も多いのではないでしょうか。
そこで、トラックの規制緩和によるメリットとデメリット、そしてトラック業界の将来性について考えてみたいと思います。
規制緩和とは
規制緩和の始まりは、電気通信事業に自由に参入できるようになった民営化後、日本電信電話公社が日本電信電話株式会社(NTT)になった1985年の日本電信電話公社民営化が始まりと言われています。
近年では電力自由化も規制緩和の1つとして注目を集めています。規制緩和は、自由競争を制限する規制を緩和しサービスや生産性を向上させることを目的とした行いのことを言います。
サービスや生産性を向上させ規制により守られていた歴史的経緯により維持されてきた権益(既得権益)をなくすことで、新規参入企業が増え消費者が自由かつ適切な選択ができるようになるため、経済が活性化します。
規制緩和は農家や医学品、金融機関、そして運送業界までさまざまな分野で実施されてきました。
運送業界の規制緩和の具体例
規制緩和は運送業界でも実施されました。中でもよく知られているのが
- 2000年に実施された貸切バス事業の規制緩和
- 2002年に実施された乗合バス事業の規制緩和
の2つです。
これら2つは、それまで行われてきた需給調整規制を廃止し一定の条件を満たした事業者であれば誰でも参入できる事業許可制を導入しました。読み通り、高速バス業界は新規参入事業者が増え競争が激化しました。
しかし高速バスの競争が激化しすぎてしまったため、運転手の過重労働が問題になったり過重労働が原因の居眠り運転などが増えました。これらを受け2013年8月以降に新制度を開始しました。
運送業界規制緩和のメリット
事故の増加や運転手の過重労働が問題になってしまった高速バスの規制緩和には一体どんなメリットがあったのでしょうか。
中国をはじめとした海外からの旅行客が増え観光バス不足に陥った日本。そこで貸切バスや乗合バスの規制を緩和することで新規参入事業者を増やし、観光バス不足を回避しました。
これにより高速バス業界の競争が激化し運賃が下がるという利用者側にとってのメリットも産まれました。他にも、路線の拡大により利用者の選択肢が広がるメリットもありました。
規制緩和によるデメリット
過当競争による価格低下が原因で
- 安全対策がきちんと行われていなかったり
- コンプライアンス軽視が起こったり
などのケースもあります。
そして規制緩和によるデメリットで一番大きいのは運転手が受けるデメリットです。同じ運転手でも正社員とアルバイトで所得格差が生じます。またサービスを多様化するため運転手に対してのモラルやマナーが問われます。
そのような負担がある中、運転手にとって一番の負担は過労です。過労による居眠りが原因で2012年北陸からディズニーランドに向かっていたバスが衝突事故を起こし、7人の死者をだす大きな事故が起こりました。
この事故をきっかけに2012年7月、新高速乗合バス制度を制定しツアーバスへの規制を強化しました。
働き方改革に向けたアクションプラン
規制緩和のメリットとデメリットを見てみると、メリットは利用者側に、デメリットは運転手側に影響を受けることになります。これらを回避するために、全日本トラック協会は「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」を計画しました。
では、トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプランとは一体どのようなものなのでしょうか?簡単に説明いたします。
このアクションプランの基本方針は
- トラック運転手の長時間労働
- 労働条件の改善
であり、時間外労働年960時間超えのトラック運転手が発生する割合が「ゼロ」にすることを目的としたプランです。
内容として
- 生産性の向上
- 運送業者の経営改善
- 多様な人材確保と育成
- フォローアップ
などが挙げられます。
生産性の向上と運転業者の経営改善の主な方法とは、
- 荷待ち時間や荷役時間の削減
- 高速道路の有効活用
- 市街地での納品業務の時間短縮
- 中継輸送の拡大
などを行うことで労働の生産性を向上しました。さらに運転手の処遇の改善や経営基盤を強化することで運送業者の経営自体を改善させるという方法を行いました。
また年齢や性別にとらわれることなく女性や高齢者が働きやすい職場作りや、従業員のスキルアップやキャリアアップが可能となる教育・人事制度を設けました。
働き甲斐のある職場を作ることで多様な人材を確保し、その人材を育てるという施策を考え、それらを着実に実行しより大きな効果を上げるために、モニタリングの仕組みを確立するなどのフォローアップも行いました。
規制緩和が進んだとしても、労働環境が安定すれば利用者に対してサービスの向上につながると共に雇用の安定にもつながり、利用者・労働者ともにメリットを得られるようになります。
まとめ
いかがでしたか?
規制緩和は私達に関わる日本の経済を活性化させるための行いです。メリットが生まれる反面、デメリットも生まれてしまう場合もあります。
そこでそのデメリットを改善するためにアクションプランが誕生します。アクションプランなどの策を練ることも大切ですが、やはり何より大切なのは関係者である国や自治体、物流関連施設などの運営者など協力が必要となります。
規制緩和を上手く利用し、素敵な日本を作っていきましょう!