玉掛けの8種類の吊り方をご紹介!吊り方の注意点も解説
玉掛け作業では、吊り荷の種類や形状に応じて、さまざまな吊り方を使い分ける必要があります。また、状況によって用具を使い分ける必要もあります。
この記事では、基本的な吊り方の種類や注意点などを紹介していきたいと思います。
Contents
玉掛けのいろいろな吊り方
2本2点吊り
2本のワイヤーロープを使用して、吊り荷の2ヶ所を持ち上げる吊り方です。吊り荷に金具を取り付けることができる場合に有効です。
金具を吊り荷に取り付ける際は、吊り荷が回転しないように、荷物の重心より高い位置に取り付ける必要があります。原則として、ロープ同士の角度「つり角度」が90度以内になるようにしなければいけません。
4本4点吊り
4本のワイヤーロープを使用して、吊り荷の4ヶ所を持ち上げる吊り方です。吊り荷に金具を取り付けることができる場合に有効です。
回転の不安はなくなりますが、ワイヤーロープの端にある輪の部分「アイ」がフックの部分で重ならないようにして、フックの方向に合わせた並び順でアイを掛ける必要があります。
2本4点あだ巻き吊り
2本のワイヤーロープをそれぞれ吊り荷に巻きつけて吊る方法です。巻きつけることで内側に引き寄せようとする力を防ぐことができるので、特に長いものや複数のものを一括りにして吊り上げるときに有効な方法です。
吊り荷にワイヤーロープを巻きつける際には、ロープ同士が重ならないように気をつける必要があります。また、滑りを防止するために、つり角度が60度以内になるようにしましょう。
2本2点あだ巻き目通し吊り
2本のワイヤーロープをそれぞれ吊り荷に巻きつけた上で、さらにアイ(アイ金具)の部分にロープを通して吊り上げる方法で、複数の長物をまとめて吊り上げる際などに有効です。2本のワイヤーロープをそれぞれ絞る向きを変えることで、回転を防ぐことができます。
吊り荷に巻きつけるときにワイヤーロープが重ならないようにすることももちろんですが、目通しした箇所のワイヤーロープに強い負荷がかかるので、劣化に注意する必要があります。
滑りにくい掛け方ではありますが、つり角度が60度以内になるようにしましょう。。
2本4点半掛け吊り
2本のロープをそれぞれ吊り荷の下に回して吊り上げる方法です。簡単に掛けられる方法で、重心が安定している吊り荷に対して有効です。
簡単ではありますが、揺れが大きくなればロープの掛け位置がずれてしまいやすいので、注意が必要です。特に、荷の重心が偏っている場合は滑りやすくなるので、バランスを見極めることが重要です。
また、つり角度が大きくなるとワイヤーロープが内側に引き寄せられやすくなるので、当て物などで滑らないようにする措置を施した上で、つり角度が60度以内になるようにする必要があります。
2本2点目通し吊り
形としては、ワイヤーロープをアイ(アイ金具)に通して作った輪の中に吊り荷を潜らせたようなイメージです。あだ巻き目通し吊りの「あだ巻き」の部分がない状態ですね。長尺物や複数のものを一括りにする際に有効です。
吊り荷を絞り込むことで摩擦力が生まれるので、ワイヤーロープがずれることを防げます。浅搾りと深絞りがありますが、深く絞り込むとワイヤーロープへの負荷が大きくなるので、劣化に注意しましょう。
また、シャックルを使用する場合には、ボルト部分が絞り側にならないよう、向きに注意が必要です。つり角度は原則として60度以下です。
3点調整吊り
2本のワイヤーロープとチェーンなどの調整器を使い、左右非対称の吊り荷を吊り上げる方法です。自動的に重心部分を調整してくれる調整型吊金具も、各メーカーから販売されています。
吊り荷への掛け方はいろいろですが、水平を保つことが大切です。また、調整器は荷重をかけていない状態で操作する必要があります。
あや掛け吊り
2本のロープを吊り荷の底面で交差させる方法です。円板状の荷物を吊るのに最適な方法です。
交差部分が重心の真下にくるよう調整する必要があり、また、交差部のワイヤーロープが傷みやすくなるので、劣化にも注意が必要です。また、円柱状や円錐状の荷物を吊ると不安定になりやすいので、十分に注意してください。
その他にもクランプ、ハッカーを用いた掛け方などがありますが、どんな掛け方にせよ1本吊りは吊り荷が回転する危険性があり、また、吊り荷が不安定になるため落下の危険性も生じるため、原則として禁止です。
クレーンフックの掛け方
クレーンフックへのワイヤーロープの掛け方は、
- ワイヤーロープのアイをフックにそのまま掛ける「目掛け」
- アイの部分を引っ掛けずにワイヤーロープをそのまま掛ける「半掛け」
- ワイヤーロープをフックに1回巻きつける「あだ巻き掛け」
- フックの肩部分にワイヤーロープを巻きつけて掛ける「肩掛け」
があります。
いずれの場合も、フック上でワイヤーロープ同士が重ならないように配慮が必要です。特にあだ巻き掛けの場合は幅を取るので、一般的に4本吊りまでの掛け方とされています。
また、肩掛けはフックの形状によっては掛けづらいものもあるので、注意が必要です。それぞれの掛け方に長所・短所があるので、特性を十分に理解した上で、吊り荷に応じて掛け方を使い分けることが大切です。
玉掛けに適した用具の選び方
玉掛け作業になくてはならない用具が「スリング」です。これがなければ荷物を吊り上げることができません。それぞれ特性があるので、作業内容によって使い分ける必要があります。
安全に玉掛け作業を進めるためにも、日々の点検を確実にしておきましょう。
ワイヤーロープ
日本で最も使われているポピュラーなスリングが、ワイヤーロープです。あらゆる場面で目にすることができるスリングですが、形崩れを起こしやすいのが難点です。
錆びやすいだけでなく、あだ巻きによる変形、目通しによる劣化などもありますので、作業の際はこまめに点検をして安全性を確かめましょう。
スリングベルト
強度の高い繊維で作られたベルトです。軽量で扱いやすいため、頻繁に掛け外しをする際に有効です。吊り荷を傷つけにくいというメリットがありますが、スリングベルト自体の耐久性は高くはありません。
鋭利な荷を扱う際には保護具を使用します。また、熱や太陽光には弱いため、保管の際は注意が必要です。
チェーンスリング
耐久性が高く、磨耗や形崩れの心配がないのがチェーンスリングです。ただし重量があるので、扱いは楽ではありません。継続した作業に適しているスリングといえるでしょう。また、耐久性は高くても、錆びる危険性はありますので、手入れが大切です。
玉掛けでクランプやハッカーを使う吊り方の注意点
吊り荷に金具やアイを引っ掛けるところがない場合に必要となるのがクランプやハッカーです。
クランプは、吊り荷を挟んで持ち上げるための道具です。主に鋼板や鉄骨を吊り上げるために使用され、吊り荷自体の重さを挟み込む力に変換して吊り荷を固定します。
つまり、吊り荷が軽すぎると、挟み込む力が足りなくなり、吊り荷を持ち上げることができない場合もあります。クランプには縦吊り用と横吊り用があり、また、許容板厚が設定されているので、用途に応じて適切に使い分ける必要があります。
ハッカーは2本の爪を吊り荷の水平面に引っ掛けて吊り上げるための道具で、主に鋼板などの吊り上げに使用されます。ハッカーは使い方が簡単な反面、事故にも繋がりやすい道具なので、使用に際しては重心の見極めやつり角度などに十分な注意が必要です。
また、
- 片方の爪だけで使用しないこと
- 必ず2本吊りや4本吊りなどの偶数で使用すること
など、留意点がたくさんあるので、安全な使用法を事前にしっかり確認しましょう。
玉掛け作業は安全な吊り方を選ぶことが大事!
人間の力では持ち上げることができない荷物を持ち上げてくれる、心強い味方になってくれるのがクレーン。ですが、そのための玉掛け作業には、ひとつ間違えば大事故にも繋がりかねない危険が隣り合わせなのも事実です。
用途に応じた用具や適切な吊り方を選ぶことは、安全な玉掛け作業の第一歩です。また、玉掛け技能講習や玉掛け特別教育で学んだことを忘れずに、基本に忠実な作業をすることが、事故を防ぐ最大の方法です。