トラック運転手が知っておくべき保険内容|運送会社/個人の自賠責保険と任意保険の相場や違いとは
2019/02/13
トラック運転手の皆さんは、自分の会社が入っている保険について詳しく知っていますか?
近年トラック業者の保険未加入問題が深刻になっており、事故の際にドライバーが大きな金額を負担する羽目になる、というケースも起こっています。
トラック運転手は交通事故のリスクがある仕事なので、自分が勤務するトラック会社が十分な保険に加入しているのか調べた上で、会社選びをすることが大切です。
今回はトラック運転手がチェックするべき2つの保険についてご説明いたします!
Contents
トラック事業所が加入しないといけない2つの保険
トラック運転手が運送会社を選ぶ際に、見落としがちなのが会社の加入している保険内容です。
どこの会社でも最低限の保険には入っているだろう、と思うかもしれませんが、加入を義務づけられている保険にも入っていない運送会社が多く残っているのが現状です。
トラック運転手が会社を選ぶ際に確認しておきたい保険が以下の2つです。
- 社会保険
- 自動車保険
①社会保険
社会保険とは、怪我をした時の入院代や退職後の年金など、生活の様々なリスクをカバーし、国民の最低限の生活を維持するための保険です。
近年、社会保険に加入していない運送事業所の増加が問題になっており、平成20年より社会保険未加入の事業所に対する取り締まりが強化されました。
トラック事業所の社会保険未加入問題
国土交通省によると、社会保険に加入していないトラック運送事業所は、平成21年で全体の25%もありました。
引用元:保険未加入企業の排除方策について
この理由は、中小事業者の増加により競争が激化し、運送原価を下げるため、高い保険料を払わない会社が増えたためです。
競争の激化が原因で社会保険に入らない事業所を増やさないため、平成20年7月以降に、事業許可の条件として社会保険等への加入を義務付けています。
また、既存事業者が社会保険に未加入の場合は、下記の法令違反となり、行政処分の対象となります。
貨物自動車運送事業法 第25条第2項:
一般貨物自動車運送事業者は、一般貨物自動車運送 事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争を してはならない。
トラック会社を選ぶ際は、必ず社会保険に加入しているかを確認してください。
②自動車保険
トラック運転手自身や運転するトラック、また事故の被害者をカバーする保険が「自動車保険」です。
自動車保険には、法律で加入が義務付けられている「自賠責保険」と、個人の意思で加入する「自動車保険」の2種類に分かれます。後者の自動車保険は通称「任意保険」と呼ばれます。
自賠責保険のカバー範囲
自賠責保険は、自動車の運行で他人を死傷させた場合の人身事故による損害に支払われる保険です。
被害者の治療費などの損害への支払い上限が120万円、後遺症の介護費支払いの上限が3000万円〜4000円、被害者の死亡による葬儀費や慰謝料などの上限が3000万円です。(それぞれ被害者1人につき)
ただし、100%被害者の責任で発生した無責事故は、支払対象になりません。
引用元:自賠責保険ポータルサイト
トラック運転手に限らずすべての運転手に義務付けられており、無保険運転は違法です。
▼2018年の自賠責保険料一覧(本土)
自動車保険(任意保険)のカバー範囲
トラック運転手にとって重要になるのが自動車保険(通称:任意保険)です。任意という名前の通り、自賠責保険とは違い加入が義務付けられてはいません。
任意保険は、被害者の身体だけでなく、自分や搭乗者の身体・車・物まで補償されるのが特徴です。
任意保険の内容は大きく以下の3つに分かれます。
①他人の身体や財物に与えた損害を補償する保険(対人・対物賠償保険)
自動車事故によって他人を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負った場合に、自賠責保険で支払われる限度額を超える損害賠償額に対して保険金が支払われる保険です。自賠責保険を補完する保険といえます。
事例)歩行者をはねて怪我をさせた、他の車に衝突し相手の運転手を死亡させた、他人の家にぶつかり玄関を壊した、など
②運転者や同乗者が被った身体の傷害を補償する保険(人身傷害保険、搭乗者傷害保険、自損事故保険、無保険車傷害保険)
自動車事故によって他人の財物に与えた損害に対して、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険です。
事例)運転中に川に落ちて自分が怪我をした、電柱にぶつかって同乗者が死亡をした、衝突して怪我をした相手が対人賠償保険に入っていなかった、など
③自分の自動車が被った損害を補償する保険(車両保険)
自分の車両を守るための保険です。災害や盗難による車両の損害額を補償します。
事例)崖から転落して車が大破した、吹き飛ばされてきた看板が自動車に当たり大破した、自動車を盗まれた、など
引用元:日本損害保険協会
自賠責保険でカバー仕切れない損害費を、任意保険がカバーすると考えてください。
トラック会社が任意保険に入らない理由
トラック運転手にとって重要な任意保険ですが、実は多くの運送会社が任意保険に入っていません。その理由はなんなのでしょうか?
大手運送企業の特権である自家保険とは?
大手トラック会社は、自社の資金で事故補償する方がお得なため、任意保険に入っていません。
例えば、運送業大手のヤマトや佐川などは、任意保険には入らず自家保険を使っています。これは、社内のお金で賠償金を支払う体制の事です。
資本力がある大手にとって、高い任意保険料を払うより、自社のお金で事故の補償した方が安くつくのです。
自家保険により、年間約5億円を節約したという会社の例をご紹介します。
ある運輸会社では自賠責保険と任意保険に加入した場合の支払う保険料金と自動車事故による賠償金額を比較した結果、支払う保険料(自賠責保険+任意保険)が被害者に支払う賠償金を大きく下回りました。
年間に必要な保険料を計算したところ、2t超のトラック1台あたりの保険料金が、自賠責保険は年間75,700円(現在は39,540円)で、さらに任意保険(対人、対物、搭乗者保険)にも加入すると年間約43万円になります。この運輸会社のトラック保有台数1600台に必要な年間の保険料金は約6億8,100万円となりました。
一方、被害者に支払った賠償金は、年間約270件の事故(対人・対物)が発生し合計で1億6,200万円だったようです。つまり、この運輸会社は任意保険に加入しなかった事で、約5億円も節約に成功した事になります。
自家保険では、会社が保有している車両が多ければ多いほど、保険料金の節約ができる事になります。
中小運送企業が任意保険に入らない理由
中小企業が任意保険に入らない理由は、そのほとんどが高額な保険料を払う余裕がないためです。
しかし、任意保険に入っていないと、自賠責保険では補償しきれない事故を起こした場合、損害額の一部をトラック運転手が負担するリスクがあります。
事故を起こしてしまい、何百万という借金を負わされた、という記事もあります。その記事を一部抜粋します。
同僚は安月給にもかからわず100万円を超える支払いが残っている人がいました・・・
当時の会社は私が今いる運送会社より年収で100万円くらい少ない。業務量は今いる会社より多かったです。
大手の「某大手引っ越し会社」なんかだと、自分が破損していなくてもチームの誰かが破損してしまった場合「連帯責任」として請求されることもあります。
なんと借金をさせられ毎月の給料から天引きまでさせられていたようです。
中には200万円を超える借金をさせられたり、そのまま借金を抱えたまま退社を余儀なくされた元社員の方もいるようです。
引用元:トラック運転手のブログ
事故が起こるリスクが高いトラック運転手は、任意保険に入っていないと、高額な金額を請求されるリスクがあるのです。
会社を選ぶ時に確認すべき事
トラック運転手が会社を選ぶ際に、任意保険に加入しているかを確認する事はとても重要です。
もし任意保険に入っていない場合でも、トラック運転手が事故の損害額を負担する可能性があるか、ある場合、負担額は全体の何割なのか、入社する前に必ず確認するべきです。
安心してトラック運転ができるよう、会社選びの際は必ず保険内容を確認しましょう。