重量物運搬方法をわかりやすく解説!人力と機械それぞれの運搬方法
トラックのドライバーとして仕事をしていると、重量物を運搬しなければならない場面にたびたび遭遇します。
しかし、重量物を運ぶ方法と一口に言っても、実際にはいろいろなやり方が存在します。どんな重量物の形状なのか、どこに運搬するのかなど、用途に合わせた方法を詳しくチェックしていきましょう。
Contents
人力で持てる重量物の運搬方法
重量物の中にも、人間が持てる範囲のものからそうでないものまで様々なバリエーションがあります。まずは人力で持ち運べる重量物について説明していくことにしましょう。
労働基準法が定義する重量物とは
あまり知られていないことですが、実は労働基準法に重量物の運搬に関する規定があります。その規定というのが、「職場における腰痛予防対策指針」。
これによると、18歳以上の男性が機械を使わずに取り扱えるのは55kgまでとされています。つまり、労働基準法は55kg以上を重量物と見做しているわけです。
手作業で55kg以上のものを持ち運ぶシチュエーションが発生した場合は、二人以上で運搬することを心がけましょう。
女性に関しては、
- 継続して運ぶ場合・・・20kg未満
- 継続しない作業の場合・・・30kg未満
であることが求められています。これらを超える重量のものを持つときは必ず二人以上で作業しましょう。
未成年者の場合はもう少し複雑です。
16歳未満の男性であれば
- 継続作業で10kg未満
- 断続作業で15kg未満
女性であれば
- 継続作業で8kg未満
- 断続作業で12kg未満
というのが一人で取り扱える範囲であり、それぞれの数字を上回ると重量物扱いとなります。
重量物運搬台車などを活用する
フォークリフトなどを使うまでもないけれど、人間が持ち上げて運搬するのは厳しい……そんな重さのものを運ぶときは、重量物運搬台車を使うことを考えてみましょう。
メーカーや用途によって形状も違ってくるのですが、中でも使いやすいのは小型の平台車。小型であるがゆえに持ち運びがしやすく、保管も簡単です。移動はキャスターですから、平らな地面の上であれば押すだけで平行移動させることができるんですね。
また、ハンドパレットを使うのも効果的です。自走式のタイプを導入すれば運ぶ人間の腕力に依存しないので、誰が使っても作業効率がアップすることになるでしょう。
重量物運搬用器具を活用する
人力で重量物を運搬しやすくするためには、ショルダードリーという道具を使うことも選択肢の一つに含めておくとよいでしょう。ショルダードリーとは、ダッチウエストジャパン株式会社が開発した重量靴運搬器具です。
ベストのようなショルダーハーネスを二人で身につけ、二人の間をストラップを繋いで使います。重量物の下にストラップを通して持ち上げると、荷重が二人の肩に均等に分散するという仕組みです。腕や腰、背中への負担が和らげられるわけです。
ショルダードリーは人間工学に基づいて作られており、アメリカで特許も取得しているなど、確かな性能を持っています。職場の作業効率の向上に悩んでいる方は導入してみてはいかがでしょうか。
人力では持てない重量物(数百キロ~数千トン)の運搬方法
先に挙げたような運搬用器具を使っても到底持ち運べないほど重い物の場合は、どうやって運ぶのがよいのでしょうか。
ここからは工場設備などに代表されるような、数百キロから数千トンの重量物を運搬する方法について説明していきます。
人間の手では持てない重量物の種類
人間の手で持てない重量物にはどのようなものがあるのでしょうか。
たとえば、工場用の工作機械や設備がこれにあたります。工作機械や大規模な設備となると、一つで10トン近くの重さになることも珍しくありません。とても人間が持ち上げることなどできませんよね。
また、医療機器も代表的な例です。MRIやCTスキャンといった大型の医療機器は、人間の手で持ち運べるものではありません。他の例としては、美術品や楽器の中にも人間が持てないほど重いものがあります。
大型の重量物を運搬する方法
では、そうした大型の重量物を運ぶにはどうしたらよいのでしょう。
まず運搬に関してですが、これは大型トラックやトレーラーで運搬することになります。運び出しや運び入れを行う場所によってはカーフェリーが使われることもありますね。
そして運搬の前後、つまり積み込みや積み下ろしの際には、
- フォークリフト
- クレーン車
- ユニック車
が使われます。港湾設備や鉄道施設を覗いてみるとわかりやすいのではないでしょうか。フォークリフトやクレーンでコンテナが荷役されている光景を目の当たりにすることができるはずです。
このように、人力でどうにもならないほどの重量物に関しては、車両や機械の力を借りることになります。
大型の重量物を運搬する際に必要な免許と取得方法
先述のとおり、大型重量物を運ぶ際には大型車やフォークリフトを使用します。となると当然、運転するための免許が必要になってきますよね。
ここからは取得しておくと役立つ免許や、取得の方法について紹介していきます。
大型免許
大型トラックを運転するためには大型免許が必要です。
大型免許を所持していると
- 車両総重量11トン以上
- 最大積載量6.5トン以上
の車両を運転できるようになります。
大型免許の取得要件ですが、
- 満21歳以上
- 普通免許か大型特殊免許を取得している
- 免許経歴が通算3年以上
でなくてはいけません。
- 視力は両眼0.8以上
- 片目0.5以上
- 深視力は誤差が平均2cm以下
- 色彩識別ができる
- 10メートルの距離から90デシベルの警報が聞こえる
- 自動車の運転に支障を及ぼす身体障害がない
という条件もあります。
けん引免許
車両総重量が750kg以下の車を牽引するときは牽引免許不要なのですが、なにしろ運搬するのが重量物なので、そうと言ってもいられません。大型トレーラーを運転するためには牽引免許が必要なのです。
牽引免許の取得要件は、
- 満18歳以上
- 大型免許・大型特殊免許・中型免許・普通免許のいずれかを取得している
- 視力や聴力、色彩識別などの条件は大型免許と同様
です。
フォークリフト運転技能講習
最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転するためには、フォークリフト運転技能講習を修了する必要があります。この講習は18歳以上であれば誰でも受けることが可能です。
運転技能講習には学科と実技があります。学科、実技を合わせて原則的には35時間の受講が必要なのですが、所持している免許の種類や実務経験の有無によって免除される科目があるため、修了までにかかる時間は個人個人で違います。
フォークリフトの運転技能講習は各都道府県の労働局長が登録した教習機関で受けることができますから、最寄の教習機関がどこか確認しておくとよいでしょう。
小型移動式クレーン技能講習
移動式クレーンとは「荷を動力を用いて吊り上げ、水平に運搬することを目的とした移動装置で、原動機を内蔵し、かつ不特定の場所に移動させることができるもの」のこと。
このうち吊り上げ荷重1トン~5トンのものが小型と定義されています。ユニック車がこれにあたりますね。
小型移動式クレーンを操作するためには、技能講習を修了して修了証を受け取る必要があります。技能講習はやはり学科と実技に分かれていて、持っている資格によって修了までの時間は変わります。
可動式クレーン運転免許
可動式クレーンとは、移動式クレーンのうち吊り上げ荷重が5トン以上のもののことを言います。可動式クレーンを操作するためには移動式クレーン運転士免許を取得する必要があります。
これもやはり学科と実技に分かれています。受講時間や料金は地域や免許センターによって様々なので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。
玉掛け技能講習
クレーンを使用するためには運転士免許だけでは不充分です。というのも、運転士免許ではクレーン車を運転することはできても、荷物をクレーンのフックに掛ける作業ができないからです。荷物をフックに掛けるための資格が、玉掛け。
資格を取得するためには技能講習か特別教育を受けなくてはなりません。今回は重量物の玉掛けなので、当然扱う荷物は1トン以上。したがって、受けるべきなのは技能講習のほうです。
玉掛けの資格を持っていると小型移動式クレーンの受講が一部免除されますから、まず玉掛けから取得することをおすすめします。
まとめ
皆さん、いかがでしたか?
重量物の種類や、それらを取り扱う方法にも様々なものがあると分かっていただけたのではないでしょうか。重量物を運搬する仕事に就きたいのであれば、自分が希望している業務に必要なスキルや資格を確認してみてください。