運輸安全マネジメント制度とは?評価の概要やメリットを徹底解説!
運送会社を運営する上で、安全に運輸することは重要ですよね。
では、運輸安全マネジメントとはどんな制度なのでしょうか。
本記事では運輸安全マネジメントの概要からメリットまで徹底解説します!
Contents
運輸安全マネジメントとは
物流業界、運送、輸送に関しては安全確保を行っていくことはなによりも重要です。実際に平成17年ごろには不注意や安全確認を怠ったことから多くの事故、トラブルが多発しました。
このことを受けて輸送に関する事業法に基づく保安監査だけでなく、それぞれの運輸事業者が企業を通して安全管理体制を構築することで輸送の安全性を向上させることを目的とした制度を平成18年10月に導入しました。これが「運輸マネジメント制度」です。
運輸安全マネジメント制度の概要
運輸安全マネジメント制度では運輸事業者が自主的で積極的に輸送の安全の取り組みを継続的に行うことで安全性の向上を図ることが求められています。
また、国土交通省は運輸事業者が行う安全管理体制の実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価を行います。
この評価では経営責任者や安全管理者などにインタビューを行い、文書や記録類の確認を通じて運輸事業者が構築している安全管理体制に対して、
- 創意工夫がなされている点
- 熱心に取り組んでいる点
- 特に優れている点
- 継続的に取り組む必要がある点
- さらなる工夫の余地がある点
について評価を下して、助言を行います。
このように保安監査のような罰則や処分が行われるというものではなく、運輸事業者がそれぞれに輸送の安全性を向上させるための自主的な取り組みを行っていくのが運輸安全マネジメントなのです。
なぜ制定されたのか
近年、ネット通販などの普及によって運輸、物流業界がますます活性化しています。そのこともあってドライバーの高齢化や人手不足が常態化してきています。
これはドライバーの過剰労働や不注意の運転などを増加させてしまいました。その結果、人的要因による事故やトラブルが多発してきたことが制定の理由となっています。
具体的に何をしたらいいのか
具体的に行われる安全マネジメントは大きく3つの柱で成り立っています。
- 「従業員に対する指導監督」
- 「輸送の安全情報の公表」
- 「安全マネジメントの実施」
これらに関しては「完全義務」ではなく、すべての運輸事業者に対する努力規定です。しかし指示されている内容に関して未対応の場合は改善指導の対象事業者となります。それぞれの具体的な内容は以下のようなものです。
「従業員に対する指導監督」
義務→未対応の場合行政処分の対象
- 輸送の安全に関する基本的な 「方針」 を策定する
- 輸送の安全に関する基本的な 「方針」 を全従業員に周知する
- 「方針」を実現するための 「目標」 を立案する
- 「目標」を達成するために必要な 「実施計画(措置)」を立案する
- 「実施計画(措置)」を実施する
- 従業員に対する教育・研修を計画し、実施する
- 事故を未然に防ぐ為の情報や事故・災害情報活用するしくみを実施する
「輸送の安全情報の公表」
義務→未対応の場合行政処分の対象
- 決算終了後100日以内に次の情報を公表する
A 輸送の安全に関する基本的な 「方針」
B 「方針」を実現するための 「目標」
C 「方針」を実現するための 「目標」の達成状況
D 自動車事故報告規則第2条に規定する事故に関する統計 - 遅滞なく公表すべき内容輸送の安全に関する行政処分を受けたとき、その行政処分の内容とそれに基づき講じた処置及び講じようとする処置
「安全マネジメントの実施」
努力=未対応の場合、改善指導
- 輸送の安全に関する経営トップの責務を定める
- 輸送の安全を実現するため必要な責任ある組織体制を構築する
- 輸送の安全に関する基本的な 「方針」 を策定し、全従業員に周知する
- 「方針」を実現するための 「目標」 を立案する
- 「目標」を達成するために必要な 「実施計画(措置)」を立案する
- 「実施計画(措置)」を実施する
- 輸送の安全を実現するために必要な情報を共有し活用する
- 事故・災害等に対応するための報告連絡体制を構築する
- 輸送の安全を実現するための教育・研修を計画し実施する
- 安全マネジメントのチェック(内部監査)を実施し、再発防止、予防、改善に展開する
- 安全マネジメントの運用状況を経営トップが確認し、指示を出す
- 情報を公開する(上記、【輸送の安全情報の公表】と同じ)
- 輸送の安全を実現するために取組んだ内容を記録し管理する
運輸安全マネジメント評価とは
運輸安全マネジメントの評価に関しては専門の研修を修了しているNASVA安全評価員として指名を受けた職員が行うことになっています。評価の対象となるのは評価を希望する事業者です。
評価に関しては書面により事前調査と事業所の訪問などによって評価されます。この際、本社および営業所1ヶ所が訪問を受けます。評価に関しては1件あたり約56万円の評価料金と評価員の交通費および宿泊費がかかります。
評価申込書を提出してからだいたい2ヶ月ほどで評価がなされます。
運輸安全マネジメント制度のメリットとは
運輸安全マネジメントの評価を受けると事業者が安全に対して取り組んでいるということが客観的に判断できるようになり、業務においても信頼の証となります。また、他にも様々なメリットが発生します。
事故防止につながる
はっきりと安全に対する取り組みが明文化されることで事故の防止につながります。だれかが何となくわかっているということではなく、明確にしている点が重要とされています。
安全運転への意識が高まる
安全運転への取り組み方がはっきりとされることで安全運転に対するドライバーの意識が高まります。もちろんこれも事故の防止につながることです。
事故に関する情報を共有できる
運輸安全マネジメントには事故やトラブルが起きた際の対処が記されるだけでなく、事故の内容に関しても記録が行われます。そのため情報が事業所内で正しく共有されることになります。
まとめ
運輸、物流業界が活発化していく中でドライバーの安全運転意識はますます重要視されています。事業者が率先して安全マネジメントに取り組むことで、業界全体の安全意識を高めることにもつながっていくのです。