運送業界の行政処分の点数制度とは?日車処分が10日車1点で厳格化に!
2019/06/05
運送業を営んでいる人にとっては、行政処分は必ず避けなければいけないことですよね。
例えば、日車数の累積は深刻な行政処分につながる可能性があります。
日車処分の厳格化とあわせて、運送業界の累積違反点数制度についてわかりやすく説明しています。
Contents
運送業者が受ける行政処分
事業許可取消
行政処分の中で一番重い処分内容は事業許可取り消し処分となります。過去2年間で4度目の事業停止処分を受けていて以下に述べる事業停止処分を受けると許可の取り消しになってしまいます。
- 累積違反点数が30点以下の事業者について270日車以上の処分日車数を付された場合
- 累積違反点数が31点以上の事業者について180日車以上の処分日車数を付された場合
- 累積違反点数が51点以上となった場合
累積違反点数が過去3年間で81点以上の違反点数が課せられても取り消し処分になります。
- 車両停止・事業停止等の命令に背いた命令違反
- 同一事業停止処分を過去3年で2度受けた場合
- 旅客運送を継続して行った場合
など悪質な法令違反があった場合は事業許可取消処分の対象となります。
事業停止
事業停止は、悪質、重大な法令違反を事業者が起こした場合に、一定の期間運送行為を行う事が出来なくなる行政処分になります。
よくある間違いが事業停止と車両停止を混同して営業停止と思われている事業者がおられますが、事業停止処分になると、基本的に30日間、運送業自体を行う事ができません。
営業自体は行う事ができる車両停止処分とは別の行政処分になります。因みに、事業停止処分に該当する悪質重大な法令違反は次の様になります。
「運行管理者を選任していない」
「整備管理者を選任していない」
「乗務時間の基準に著しく違反」
「監査拒否、虚偽の陳述」
「全運転者に対しての点呼の未実施」
「名義貸し、事業の賃貸し」
「全ての車両の定期点検の未実施」
のほか違反点数が累積して事業停止になる場合があります。
車両の使用停止
車両停止処分には処分日車数制度が適用されます。例えば1台の車両を1日運行停止すれば、「1日車」という単位になります。そして車両の停止期間は、処分日車数及び違反営業所等に所属する事業自動車数に応じて定められています。
所属する事業用自動車の数にもよりますが、例えば、所有台数15台の事業所で60日車の場合は30日車×2台となります。
処分日車数制度が適用されて、車両停止になる主な違反は次の通りです。
- 「点呼の一部が未実施」
- 「帳票類の改ざん」
- 「3名以上の運転適性診断の未実施」
等になります。その他、行政処分を科せられて、その後3年以内に再違反した場合は処分日数が2倍になる場合があり、200日車を超える車両停止処分を受けた場合は地方運輸局のホームページ上で業者名が公表されます。
10日車=1点の累積
累積違反点数制度の原則は3年
監査が行われて、法令違反が判明した場合に自動車の車両停止以上の行政処分が下された場合には、個人が交通違反をした時と同じ様に運送事業者にも違反点数が付与されます。
違反点数制度は法令違反のあった営業所に対して付されて、運輸局単位で累計され、違反点数が累積する期間は基本的には3年になります。ですので、違反点数を付されて3年間付加されなければ、0点から再スタートという事になります。
3年の間に違反点数が累積すると、
- 違反事業者名の公表(ネガティヴリスト)
- 事業の停止
- 事業許可の取り消し
などの処分が適用されます。
違反点数については、処分日車数10日=1点で計算されます。この点数は管轄する地方運輸局でしっかり管理されていて、3年間の間に違反点数が累積すると、車両停止や事業停止、最悪の場合は許可取り消し処分まであります。
累積年数が短縮される場合
一定の要件をクリアしている営業所は累積年数が短縮されます。その条件は次の通りになります。
- 「行政処分を受けた日より以前の2年間で行政処分を受けていない」
- 「行政処分を受けた時点でGマークを取得している」
- 「無事故無違反で事業運営されている」
等、処分が2年に短縮される要件になります。
点数がかさむと重大処分の可能性も
行政処分の点数制度ですが、軽佻な法令違反で違反点数が少ないからといってそれを放置して度重なる違反を繰り返す事で、点数がかさみ、重大な処分を招く恐れがあります。
行政処分の中で最も重い事業許可の取消処分は運送事業者にとっては絶対に避けなければなりません。その為には事業停止や車両停止処分を受けない様にしなければならないでしょう。
そのためには違反点数を累積させる事を避けなければなりません。そのためには、社内の各種帳票類の整備、車両でいえば事故や違反を引き起こさない工夫や対策が必要になるでしょう。
ですので、問題を放置せず、常日頃から絶対に行政処分を受けない体制づくりを整えておく心構えと覚悟が大事になります。
点数が累積するとどうなるのか
20点を超えた場合
違反点数が20点を超えた場合、ネガティヴリストが公表されてしまいます。運輸局内で合計された累計点数が20点を超えると運輸局より四半期ごとに事業者名が運輸局のホームページ上に公表されてしまいます。これをネガティヴリストといいます。
ホームページ上でこの様に事業社名を不特定多数の人が目にするホームページに公開されてしまうことは、企業イメージを悪化させ、顧客の減少を招き、収益を悪化させる事になりかねません。
30点と31点の違い
違反点数が累積してしまい事業停止になってしまう要件として、累積違反点数が30点以下なのと31点以上では、大きく変わってきてしまいます。
累積違反点数が30点以下の事業者については270日車以上の処分日車数を付されなければ事業停止の要件に当たりません。
ですが、累積違反点数が31点以上の事業者については180日車以上の処分日車数を付加されると事業停止の要件に当てはまってしまいます。
以上の様に累積違反点数点数は30点を境に事業停止の要件が大きく変わってしまうことから注意が必要です。
50点超えで事業停止
事業停止になる要件としては色々な要件がありますが、累積違反点数が51点以上になってしまうと、それだけ、事業停止処分になってしまいます。
累積違反点数が51点以上という事は3年間の間に違反を重ねても、中々改善が見られない、悪質な事業者という事で事業停止処分という大変厳しい処分になってしまいます。
ご自分の会社が例えば7日間とか14日間とか営業できない、なんて事を想像するだけで大変恐ろしいという事はお分かり頂けると思います。違反箇所の改善は違反があった時点で対策を実施し改善していきましょう。
80点超えで事業許可取消処分
累計違反点数が過去3年間で81点以上の違反点数が課せられると事業許可の取り消しとなってしまいます。事業者にとっては絶対にあってはいけない、とてつもなく重たい処分になります。
累積違反点数が81点以上という事は、過去に少なくても事業停止処分を1度は受けているという事になります。
それだけ重い処分を受けていながら、その後も改善が見られなかったという事はその後の対策が思う様にいかなかったのかということかも知れません。
その様な場合は専門家に依頼して対策を行うことを検討しても良いのではないでしょうか。
日車処分の基準が厳格化された
トラック事業者の法令遵守の徹底を図るための措置
昨今では働き方改革や運送業界の過重労働問題等の影響もあり、平成30年より行政処分の処分量定が引き上げられました。その他、トラックの法令遵守の徹底を測るため巡回指導を強化するとあります。
具体的には、
- 「総合評価が著しく悪い事業者」
- 「新規参入後の総合評価が継続して悪い事業者」
- 「健康診断受診や社会保険加入等の基本項目が不適切である事業者」
に対して重点的に監査を実施するという事です。いずれも従業員の過労防止が目的ですが、事業者にとってはしっかり取り組まなければならない、頭の痛い問題になります。
処分対象となる違反が増えた
近年の社会状況の変化で労働者の働き方は大きく変わりつつあります。それは運送業界も例外ではありません。従業員の労働環境の改善、向上は安全安心な職場を築くためにも、会社が取り組むべき最重要課題となっています。
平成30年の行政処分の改正にはそういった趣旨が色濃く反映されています。処分対象になる違反が増えたのもその一例でしょう。
例えば、健康診断未受診は、全体のうち半数未満は警告だったものが、2名で20日車になっています。これまでは割合だったものが、明確に人数が規定されて、日車処分が下りやすくなっています。
日車数は最大5倍に引き上げ
平成30年のトラック運送事業における行政処分の処分量定引き上げにより、使用停止車両割合が全体の最大5割に引き上げられました。
例を挙げると、改正前は処分150日車のとき配置車両が
- 5両の場合は車両停止=2両×75日
- 10両の場合は車両停止=2両×75日
- 100両の場合は車両停止=7両×18日+1両×24日
だったのに対し改正後は
- 5両の場合は車両停止=2両×75日
- 10両の場合は車両停止=5両×30日
- 100両の場合は車両停止=15両×10日
になっています。処分日数は少なくなりましたが、一方で日車数が増えています。
まとめ
ここまでは運送業界における行政処分の点数制度について解説してきました。最近では巡回指導や監査の増加に伴い行政処分を受ける運送事業者は増加傾向にあるそうです。
先日もニュースで、某運送会社が重大事故を起こし、監査が入って営業停止になったというニュースを目にしたばかりです。行政処分を受けない様にする対策に近道はなく、日頃からコンプライアンス遵守を心がけていく事が一番の対策になります。
絶対に行政処分は受けない、そんな運送業界の見本になるクリーンな体制を作りあげていって下さい。