トラックのエアサスの使い方とは?故障した際の対応も解説!
中型トラックや大型トラックに搭載されていることが多くなってきた「エアサス」ですが、使い方を知っているでしょうか?
この記事では、中型~大型のトラックを運転している方のために、エアサスについて詳しく紹介していきます。
どのような機能なのかといった基本的なことから、状況に合わせた使い方まで徹底的に解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
「エアサス」とは?
エアサスとは「エアサスペンション」の略で、空気バネを利用した懸架装置のこと。
サスペンションという名称のとおり、
- 路面の凹凸を車内に伝えないための緩衝装置としての機能
- 車輪を路面に押さえつけたり車軸の位置を決めたりする機能
などをもっています。
従来の車は金属製のバネが組み込まれていましたが、エアサス搭載車では金属バネの代わりに圧縮空気が使われている、と考えてください。
エアサスにはトラックの乗り心地や操作性を向上させるはたらきがあるのですが、もう一つ、車高を変えるという役目もあります。
ノンステップバスをイメージしていただくとわかりやすいのではないでしょうか。低床のバスは障がい者にも優しいですが、車高が低いため、そのままでは車体の底を道路に擦ってしまいます。そこで、走行中ではサスペンションを使って車高を上げるわけです。
そういったバスと同じ機能が最近のトラックにも採用されているわけですね。
詳しい使い方を知っている人は意外と少ない
そんな便利なエアサスですが、操作のしかたを詳細に把握しているドライバーはあまりいません。メリットが多いのならもっと知られていてもよさそうですが、なぜ使い方が広まらないのでしょうか。
その理由としては、エアサスつきのトラックは一般的に中型~大型車であり、軽トラックや小型トラックではエアサスが使われないことが考えられます。
たとえ同じ会社に所属しているドライバーでも、大型車に乗る長距離ドライバーがエアサスの使い方を熟知している一方で、小型車で地場のルート配送を行うドライバーはまったく知らない……ということが珍しくありません。
具体的にどうやって使うの?
自分のトラックにエアサスがついているのは知っているが、普段使わずに済ませているから詳しい操作方法は知らない……そんな方のために、ここからは具体的な使い方を紹介していきます。
せっかく搭載されている機能は活用してこそ。スイッチひとつで車高を調節できるのですから、使えるようになると作業効率がグンとアップしますよ。
エアサスの機能と使い方!
それでは、実際のエアサスの機能および使い方について説明していきます。
必ずサイドブレーキを引くこと
エアサスを使うとき最初に押さえておくべきポイントは、操作する前に必ずサイドブレーキを引くということです。サイドブレーキを引かずにエアサスを動かすことは危険なのです。
自動車メーカーの側もそのことは当然把握しているので、エアサスのリモコンの近くには「サイドブレーキを引いてから操作してください」といった内容の注意書きが記載されています。
メーカーや車種によってはサイドブレーキを引いてからでないと操作自体できないこともあるほど。操作前にサイドブレーキを引く。絶対に覚えておきましょう。
車高を上げたり下げたりできる
これまで述べてきたように、エアサスには車高を上げ下げする機能があります。……というよりも、わざわざエアサスを操作する目的は車高の調節にこそあります。
どうやって車高を変えるのかというと、まずは前輪側を上げ下げするか後輪側を上げ下げするかを決めます。それぞれ対応するスイッチがありますから、押してみてください。
コントローラーのランプが緑色に点灯するのが、車高を変える準備ができたという合図です。
ランプが点灯した状態で矢印マークの入ったスイッチ(上下それぞれにスイッチがあるので、どちらかを選んでください)を押すと、エアサスが働いて車高が変わります。
元の車高に戻す
元の車高に戻したいときは、先程の緑ランプを点灯させた状態で、別のスイッチを押しましょう。どのスイッチを押せばいいのかというと、元の車高に戻すための専用のボタンがあるので、そこを押します。
トラックの荷台を上下から矢印で挟むようなマークの描かれたボタンです。
記憶機能の使い方
「M1」「M2」と書かれたボタンがあります。これらは記憶機能のボタンです。「M」は「Memory」を意味しているわけですね。
使い方はシンプルです。一度調節した高さで「M1」もしくは「M2」のどちらかと、「STOP」ボタンを長押しするだけ。これでその車高が記憶されます。
たとえば「M1」で記憶したら、次回からは「M1」を押せば毎回同じ車高になるわけです。
トラックの車高を上げ下げするシチュエーションはある程度限定されます。その中でも記憶機能を使いたい場面となると、たとえば毎回同じ目的地のホームにつける場合などが考えられるでしょう。
合わせる機会の多い高さがあるのであれば、記憶させておくのが便利です。
ストップボタンの使い方
ストップボタンは「STOP」と表記されているボタンのことで、エアサスの動作を止める役割を持ちます。しかし、ストップボタンを使うことはほとんどないと思っていいでしょう。少なくとも、単独でこのボタンを押すことはまずありません。
というのも、前輪・後輪ともに、上げるにしても下げるにしても、ボタンから指を離せばエアサスの動きが止まるからです。わざわざストップボタンを使うまでもないわけです。
唯一使うことがあるとすれば、先に述べた記憶機能を使う場合でしょう。「M1」か「M2」と同時に長押しするというものですね。記憶機能を利用する以外の状況でストップボタンを使うことはない、と覚えてしまって構いません。
後方にボックスが装着されている場合
また、これもやはり使うことは少ないのですが、トラックの後方に小さなボックスが設置されている場合があります。実は、コネクタを差し替えればこのボックスからでも操作可能になるのです。
とはいえ、基本的には運転席でコントローラーを操作できればそれで事足りると思われます。いちいちトラックの後ろに回って操作しなければならないようなシチュエーションは考えにくい、というのが実際のところです。
念のため「そういう機能もある」とだけ覚えておく程度で問題ないでしょう。
どんな場面で使うの?
トラックの車高を上げ下げしたい場面というのはどのような場合が有り得るでしょうか。具体的なケースをいくつか見ていきましょう。
きつい斜面を走行するとき
第一に考えられるのは、勾配のきつい斜面を走行する場合です。侵入する際にエアサスを使い、車高を上げて走行することになります。理由はトラック特有の構造です。
トラックは乗用車と違って、バンパーやステーがタイヤから大きくせり出しています。そのため、乗用車では問題にならないような少しの段差でも擦ってしまうことがあるのです。
つまり、斜面の入口でバンパーを擦らないように車高を上げるわけですね。
後ろから荷物を降ろすとき
荷台の後ろから荷物を下ろすときにも、エアサスの使い方を知っていると役に立ちます。車高を上げるのか下げるのかは荷下ろしを行う場所しだいになりますね。
物流センターなどのホームにトラックをつけるのであればホームの高さに車高を合わせると搬入しやすくなりますし、反対に地面に下ろすのであれば車高を下げたほうがスムーズに作業できるでしょう。
要するに、エアサスを操作することによって、荷下ろしする場所に適した高さに調整できるということです。作業の効率が上がったり、転落などの思わぬ事故が発生しにくくなったりといった効果が期待できます。
ホームと車高をあわせるとき
これまでたびたび触れてきましたが、ホームと車高を合わせることは作業をやりやすくするうえで非常に有効です。
荷台の高さとホームの高さが合っていれば、いちいち降りたり登ったりする必要がなくなり、台車などを押しながらでもスムーズに荷台の中とホームとを行き来できるからです。
先述したように、同じ目的地に頻繁に搬入する予定があるのであれば、エアサスの記憶機能を使って高さを記憶しておくとよいでしょう。
毎回エアサスの調整を行う必要がなくなり、ボタンひとつで記憶した高さに自動的に合わせることができるようになります。
天井が低い場所でウイングを開閉するとき
仕事内容によっては、天井のある場所や庇の突き出した場所で積み込みや荷下ろしを行わなくてはならないこともあります。
そんなとき、乗っているのがウイング車だと難儀するはめになります。ウイングを開くと、ウイング部分は上に向かって動くため、上方を塞いでいる障害物と干渉してしまうかもしれません。
しかし、エアサス搭載車であれば、車高を下げて天井との接触を防ぐことができます。
まとめ
皆さん、いかがでしたか?エアサスを使わなくても仕事を行うことはできるでしょうが、使い方を知っていれば運転や搬入作業がやりやすくなります。
操作方法はそう難しいものではありませんから、もしあなたの乗っているトラックにエアサスが搭載されているようであれば、ぜひ明日からでも試してみてください。