分割休息とは?意外と知らない分割休息と拘束時間の関係性
2020/11/17
貨物、旅客どちらの運行管理においても業界特有の待ち時間があるために、休息時間を与えられていないのが現状です。この状況を改善するために改善基準告示の中で、分割休息について明記されていることをご存知でしょうか。
そこで今回は、分かりにくい分割休息について詳しくご紹介していきたいと思います。
Contents
分割休息とは?
通常の労働では経営者は労働者に対し、勤務の終了後、継続して8時間以上の休息時間を与えなければなりません。
しかし、トラックドライバーやタクシー運転手、バス運転手においては「待ち時間」があるため、明確な休息時間が取れていない場合もあります。
そのような状況を改善するため、拘束時間の途中や拘束時間の直後に分割して休息を与えることを分割休息と言います。
分割休息を与える時の注意点
分割休息に関しては、ただ単純に労働者を休ませるだけではいけません。細切れの時間で労働者を休ませるだけでは、休息時間とは認められませんので注意が必要です。
拘束時間と休息時間の定義
拘束時間や休息時間というと難しく考えがちですが、この二つの意味をもう少しわかりやすくみていきましょう。
拘束時間
拘束時間とは、労働者が雇用者の監督下にある状況で、業務を遂行している時間です。監視下にある時間全てを指すため、昼休みなどの休憩時間も拘束時間に該当します。
つまり、会社内や会社の仕事に関わる作業を行なっている時間、および途中で作業を中断していても、その時間は拘束時間となります。
無理な残業を家に持ち帰って仕事をおこなったり、自宅待機でいつでも出勤できるように促している場合、それもれっきとした拘束時間に該当します。
休息時間
休息時間とは、文字どおり労働者に休息を与える時間になります。
基本的には「1日の労働時間は8時間」と認識されていますが、トラックドライバーの場合は拘束時間は「1日13時間」が基本になっており、状況によっては16時間までの延長が認められています。
これから計算すると、トラックドライバーの休息時間は最低でも8時間が必要です。しかし、なかなかその通りに休息が取れていないことが現実です。休息が十分に取れない状況から、分割休息という制度が生まれました。
4時間以上で始めて休息時間
休息時間の定義は、4時間以上です。4時間以下の時間では休息時間ではなく、休憩時間として扱われます。
休息時間は、労働者が労働から完全に解放されることが条件ですので、本来であれば、仕事関係の電話やメール、SNSなどの通知もないことが望ましいといわれています。
休息期間にも仕事を押し付けたり、電話対応を強要することは違法となる可能性もありますので、雇用者としては繁忙期であっても注意して対応を行いたい部分です。
分割休息でも合計10時間以上必要
分割休息を労働者に与えるにあたって気をつけなければならないのは、分割休息を与える時間です。基本的な労働時間は「1日8時間」ですが、トラックドライバーによっては、数日間トラックの中で過ごすということもあります。
その時間を全て拘束時間にするわけにはいきませんので、分割休息が必要です。分割休息は24時間で合計10時間以上が必要とされています。
休息時間の定義が、1回につき4時間以上ですので、合計12時間以上の休息時間を労働者には与えなければなりません。
常時使えるわけではない
ある意味、分割休息の制度は雇用者にとってはありがたい制度です。
特に人員が少なく、少数精鋭の状態で仕事を回していかなければならない状況では、分割休息の制度で効率よく仕事を行いたいところですよね。しかし、分割休息は常時使用できる制度ではありません。
分割休息は基本的に2ヶ月のうち1ヶ月しか使えないと決められています。つまり、1年を通して6ヶ月間はこの制度を利用できますが、それ以外は通常の休息期間を労働者に与えなければなりません。
休憩時間と休息時間と休日の違いについて
休息時間は休憩時間は定義が異なります。簡単に説明すると、休憩時間は勤務の合間に取るもので、休息時間は勤務完了してから次の勤務を始めるまでの時間を指します。そのため、休憩時間は拘束時間に含まれますが、休息時間は拘束時間にはなりません。
例えば、終業後に外でご飯を食べたり、家で睡眠を取る時間は、休憩時間ではなく休息時間となります。一方で、仕事中にお昼を食べたり、トラックで仮眠を取る場合は、休憩時間となります。
ドライバーの場合、4時間運転したら必ず30分の休憩を取らなければいけません。または、4時間の間に10分以上の休憩を複数回に分けて取ることもできます。ちなみに、荷待ち時間や手積み手卸しの作業時間は労働時間に入るため、休憩時間としてカウントされません。
分割休息の問題有り無し例
分割休息の制度はなんとなく理解できるが、どこまでが分割休息としてはありで、どこまでがダメなのかの判断は難しいところかもしれません。
ここでは、分割休息の問題有り、問題無しの例を挙げながら解説を行います。
問題ないケース
長距離トラックドライバーが目的地に向かう途中で拘束時間の限度に達したため、休息期間を取るためにトラックステーションなどの大型駐車場で車の中で休息を取る行為は、分割休息として問題ありません。
この行為は、トラックという業務に関係する環境での休息となりますが、厚労省としてはこのようなパターンも休息行為として認めています。
ただし、理想としてはトラックドライバーに対しての宿泊施設の増加や、アメニティの充実したトラックステーションの増加といった、社会的インフラの増設が望ましいといえるでしょう。
問題があるケース
トラックドライバーが昼の14時から業務を開始し、夜中の24時まで勤務。その後4時間の休息時間を取った後再度9時間近くの拘束時間を経て再度4時間の休息時間を取り、その後追加で3時間の拘束時間を経た場合。このようなケースは問題ありとみなされます。
このようなパターンで仕事をしているトラックドライバーも多いですが、この場合、基本的な10時間以上の休息時間を24時間内で取れていませんので問題があります。
使用者としても、休息時間の取らせ方には頭を悩ませていますが、違法と指摘される前に、改善を行うことが重要です。
分割休息の特例について
ドライバーは継続して8時間、分割の場合は24時間内に10時間以上の休息を取らなければいけませんが、例外が認められるケースもあります。分割休息の特例が認められる特例3つを解説します。
特例1:2人で乗務する場合
1台の自動車に2人以上で乗車する場合、1日の20時間まで拘束時間を引き延ばすことができます。また、必要な休息期間も4時間となります。ただし、車内で身体を伸ばして休息することができる場合に限り、この特例が適用されます。
特例2:隔日勤務する場合
運送会社ではあまりないケースですが、1日おきに勤務する隔日勤務の場合も特例が認められます。ただし、隔日だからといって次の日を休息にすれば良いというわけではなく、2日間合計で拘束時間を21時間を超えてはいけないというルールがあります。
また、事業所に仮眠施設がある場合は、夜間に4時間以上の仮眠を取る場合に限り、2日間の合計拘束時間を24時間まで延長することができます。ただし、24時間までの延長は2週間で3回ほどに抑えないといけません。
特例3:フェリーに乗船する場合
長距離配送の場合などに、ドライバーがフェリーに乗ることがあります。その際は、フェリー乗船時間が休息期間としてカウントされます。ただし、2人乗りの場合を除いて、最終的な休息期間は、フェリーを降りてから勤務終了する合までの計時間の半分を下回ってはいけません。
分割休息のときの点呼について
通常の点呼は、始業時と終業時の1回ずつですが、分割休息の場合は1日2回休息があるので、休息の数だけ点呼が必要になります。休息期間の取得前と取得後に電話で乗務前後の点呼と中間点呼を行い、それらに合わせて運行指示書も作成しなければなりません。
例えば、9時から16時まで勤務し、6時間の休息時間のあと22時からまた勤務する場合は、22時に再度電話で点呼を行います。
ドライバーの労働環境改善のための改善基準告知
近年、告知されたドライバー向けの改善基準告知に対し「厳しすぎる」という使用者の声も聞こえますが、ドライバーに対する負担はますます増えてきているのが現状です。
トラックやバスの運転手の過労による事故も多発していきていますので、このような制度を設けて、ドライバーの安全を守ることは当然の流れであるといえるでしょう。
まとめ
今回は、トラックドライバーに対する休息期間や拘束時間について解説を行いました。現状、ドライバーの人たちには、大きな負担がかかっており、今後もそのような状況は続くでしょう。
適度な休息期間を設け、安全な運転を心がけてもらいたいものです。
もし「拘束時間が長すぎる」「休息時間が不足している」など、労働環境にお悩みの方は、転職も一つの選択肢として検討することをおすすめいたします。
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