過積載は1割未満までなら検挙されない説は嘘?過積載の理想と現実
過積載は1割未満までなら検挙されないと、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。しかし、この説が真実なのかどうなのかよく分からないですよね。
そこで今回は、数ある交通違反の中でも大変危険だとされている「過積載」について、詳しくご紹介していきたいと思います。
Contents
1㎏オーバーでも基本過積載
「過積載」とは、「積載物重量制限超過」のことで、法律で定められた積載する物の重量、大きさもしくは積載方法の制限を超えて、積載して車両を運転することです。
簡単に言い換えれば、トラックなどにキャパシティーつまりは、許容範囲以上に荷物を載せてしまうことです。のちに述べますが、検挙される、されないは別として、法定積載量の1kgでも、オーバーすれば、「過積載」となります。
新交通三悪の一つである過積載
「新交通三悪」とは、平成5年に制定されたものです。特に、交通事故発生の際に、重大なものの原因となる危険性が高く、上記でも紹介した
- 「過積載」
- ドライバー及び同乗者の「シートベルト非着用」
- 「違法駐車」
の3つを言います。
過積載1割までなら検挙されない?
密に言えば、1kgでも法定積載量をオーバーすれば違法です。本来ならば、検挙されるべき事態です。
しかし、計測器の誤差や、トラックの部品の重さの個体差などを考えた場合に、積載している物の重量を正確に計測するのは事実上不可能なので、1割未満の過積載は感知されづらい背景があります。
過積載による罰則について
ドライバーへの罰則
過積載を行ったドライバーへの罰則は、違反の回数で異なります。
1回目に違反をした場合、車両使用停止処分の罰則が与えられ、再度違反の場合、過積載が5割未満かつ3年で4回行うと指導が入り、定期報告が義務付けられます。
次に、過積載が5割~10割未満かつ3年で4回行った場合は、事業の停止、また、これ以上の場合は事業の許可の取り消し処分です。
過積載の超過分による点数、罰金には変化があります。具体的に述べると、
- 最大積載量が10割を超えている場合・・・違反点数6点、6ヶ月以下の懲役もしくは10万円以下の罰金刑
- 過積載が5割~10割の場合・・・違反点数が3点、反則金として4万円
- 過積載が5割未満の場合・・・違反点数が2点、反則金3万円
などの支払い命令が下されます。
ただし、2015年に法改正が行われ、最大積載量が2倍以上となるドライバーに対しては、「即時告発」が実施されていて、即時告発を受けると、100万円以下の罰金刑となる場合があります。
雇用主への罰則
雇用主がドライバーに過積載を行うように指示をすると、当然ですが法律で罰則が定められています。法令違反を判断するための項目は5つあり、1つでも当てはまると処分の対象となります。
内容は、
- 死傷者を出した事故を起こした場合
- 社会的影響力の大きい事故の場合
- 過積載が計画的であった場合
- 日常的に過労運転を繰り返していた場合
- ドライバーへの監督・指導を行わず速度違反が繰り返されていた場合
の5つです。違反した場合には、運行管理者資格者証を返納しなければならず、その資格が取り消されます。
荷主への罰則
過積載に違反した荷主にも、再度繰り返して、過積載を行う可能性があると判断された場合には、警察署長から再発防止命令が下されます。再発防止命令違反を犯した場合、6カ月以下の懲役もしくは10万円以下の罰金刑が科せられます。
過積載が危険な理由
制動距離が長くなる
過積載をしていると、「制動距離」と呼ばれる、ブレーキをかけてから、実際にブレーキが効いて車が停止するまでの距離が伸びます。制動距離が伸びる原因は、過積載によって車の重量も大きくなり、走っている方向への力が加わるためです。
また、車全体の重量が大きくなるので、万が一衝突した場合に、衝撃が大きく、重大な事故を起こす可能性が高くなります。たとえ、過積載をしていない場合でも、早めの段階でブレーキをかけることを意識しましょう。
フェード現象
過積載をした状態で下り坂を走ると、ブレーキを多く踏まなければなりません。これをブレーキの「バタ踏み」と言います。下り坂では通常の法定積載量と比べてスピードが増すため、ブレーキにも負担がかかります。
ブレーキが加熱し、ブレーキが利かなくなる可能性もあるのです。また、エアーブレーキの場合は、エアー不足のため、ブレーキが利かなくなることも考えられます。こういった現象を「フェード現象」と言います。
横転
過積載をした状態だと、車体のバランスが悪くなります。
法定の積載量は、そのトラックの車輪で支えられる積載の量を定めているので、過積載をすると、荷物の重量を車輪が支えきれなくなり、バランスが悪くなるのです。車体のバランスが悪くなると、横転の可能性も出てきます。
車軸の破断
過積載の状態では、車輪同士をつないでいる、「ハブ」と呼ばれる車軸にも、相当な負担がかかります。上の「横転」の欄でも述べましたが、法定の積載量は、そのトラックの性能が耐え得る重量を定めています。
ということは、当然車軸にも、法定の積載量を超えての積載には、耐えられなくなってしまい、最終的には、破断につながってしまいます。
タイヤのバースト
過積載の状態では、タイヤに最も負担がかかります。過積載に耐えかねて、タイヤがバーストする危険性については、想像に難くないでしょう。
過積載によるトラブルは重大事故ににつながる
過積載による重大事故は、数多く起きています。
例えば、2004年、岐阜県でトラックと乗用車の正面衝突事故が起こりました。この事故では、乗用車に乗っていた家族5人と、トラックに乗っていたドライバー2人の、7人もの死者を出す重大事故でした。
原因は、トラックの過積載によるパンクで、トラックには最大積載量のなんとおよそ1.5倍もの貨物を積んでいました。過積載の重量に耐えきれずタイヤがパンクし、ハンドル操作ができなくなったことが事故の原因です。
以上のように、過積載による事故はドライバーである自分だけの問題ではなく、常に他人を巻き込む可能性のある大変危険な行為です。
まとめ
過積載は、ドライバーだけでなく、指導する立場の雇用主と荷主、それぞれの事情が絡む複雑な問題です。しかし、大変危険な行為であることに間違いはありません。
そして、過積載に対する罰則も非常に重く、また、命に関わる重大事故につながる可能性も高いものです。どんな事情があろうとも、過積載は決して行ってはならない行為であると理解しておきましょう。