運送会社の監査は甘くない?監査の種類と対策をわかりやすく説明します

   

「抜き打ちで監査に入られた」

運送業を営んでいたら、こんな言葉を耳にすることもまれではないかもしれません。

このサイトでは、運送会社に入る監査について、わかりやすくご説明しています。

巡回指導と監査、どう違う?

巡回指導と監査は似た様なものというイメージがあるかもしれませんが、巡回指導と監査ではその運営主体やその内容についての意味合いがかなり違ってきます。

その中身について説明しますと、

「巡回指導」はトラック協会に設置された「地方貨物自動車運送適正化実施機関」が運営主体となり行われ、巡回指導自体は運送業の許可を取った3ヶ月後〜半年後位で行われます。

その後は2年に1度のペースで巡回指導が行われ、いつ行われるか?何を用意するかは事前に連絡があります。違反事項があっても罰則はなく、あくまで指導という形で改善を求められます。

一方で「監査」は運輸局が主体となって行われます。監査は

  • 重大事故を起こしてしまった時
  • 巡回指導によって悪質な法令違反が発見された時
  • 通報や法令違反の疑いがある時

などに行われます。

監査は基本的に事前通告はなく、監査官が抜き打ちで来る場合もありますし、運輸局の窓口に呼び出しを受ける事もあります。巡回指導と違い、違反があれば行政処分を受ける事もあります。

運送会社が受ける監査の種類

特別監査

運転者が社会的に大きい事故(死亡事故、酒酔い運転等悪質違反を伴う事故)を引き起こした。

また悪質違反を犯した事業者であって、過去の監査・処分・事故状況及び通報等を勘案し、随時、監査が必要であると認められる事業者に対して、全般的な法令遵守状況について特別に行う監査とされています。

特別監査は「トッカン」とも呼ばれていて重大な法令違反や重大事故があった場合に行われる一番厳しい監査になります。

また、行政処分を受けた後の改善命令に従わない場合にも実施されます。運送業を営んでいる方なら一度は耳にした方もおられるのではないでしょうか。

巡回監査

過去の

  • 監査
  • 処分
  • 事故状況及び通報
  • 苦情

等により、著しい違法性の疑いがある事業者に対して、原則、重点事項を定めて行う監査とされています。

事故や苦情、または都道府県公安委員会からの通報等により、法令違反が多い疑いいがあると判断された運送事業者に対して行われます。

最近では、第三者からの通報や内部告発が増えているため、巡回指導が実施される事業者も増えている傾向があります。

近年では、パソコンやスマートフォン等のインターネットが普及してトラックの運転手も法令に関しての知識がある者も多くなりました。

そのために、法令違反が常態化している運送事業者は、運転者等の従業員からの内部告発を受けやすい状況にあると言えるでしょう。

呼び出し監査

巡回監査、特別監査の対象以外の違法性がある事業者に対して、原則として重点事項を定めて事業者を呼び出して行う監査とされています。

通常、監査には

  • 「臨店」・・・営業所や車庫で行われる
  • 「呼び出し監査」・・・代表者が呼び出されて行われる

の2種類があります。呼び出し監査は、代表者、もしくは運行管理者が運輸局、もしくは運輸支局に呼び出されて書類を見せたり、ヒヤリングを受けたりするというものです。

主に臨店しなくても確認できる事項についての監査や、何らかの監査を受けた後の改善状況の報告をする時に行われます。

気をつけたいのは、呼び出し監査の通知を受けているにも関わらず、通知を無視していると臨店監査を受ける事になってしまう場合がありますので、呼び出しにはしっかり応じる様にしましょう。

呼び出し指導

先述しましたが、巡回指導は監査と違い、事前にいつ来るか、何を準備、用意しておけば良いか等の連絡があり、違反事項があっても行政処分があるわけではなく、指導という形で改善を求められる事になります。

巡回指導でチェックされるところは、

  • 「事業計画等」
  • 「帳簿類の整備」
  • 「運行管理等」
  • 「車両管理等」
  • 「労基法等」
  • 「法定福利」

です。かなり幅広くチェックされる事がわかると思います。ただ、どの様な準備をすれば良いかは、事前に巡回指導の通知が来た際に教えてもらえるので、帳簿等はしっかり準備をしておきましょう。

そして巡回指導の結果、改善に必要な点については指導を受ける事になります。

ちなみに、

  • 巡回指導の結果があまりにも悪質な場合
  • たびたび指導を受けているにも関わらず改善がみられない場合

運輸支局に通報され、監査が行われる事になる可能性もあります。日頃からいつ巡回指導が来ても大丈夫な様に準備はしておきましょう。

監査では何をみられるか

書類、帳票類の管理状況

監査では書類、帳票類の管理の状況を調べられます。特に重要なのは、

  • 「運転日報」
  • 「点呼記録」

です。これは基本的な部分になります。日報と点呼記録を書いてない会社はまず無いと思いますが、重要項目ですのでしっかり管理しましょう。因みに日報と点呼記録の保存期間は1年になります。

次に「運転者台帳」です。意外としっかり作られている事業者は少ないかもしれません。

運転手の

  • 氏名・生年月日
  • 所持免許の種別
  • 健康状態

等を記入しておく必要があり、顔写真まで貼り付けておく必要があります。運転者台帳の保存期間は過去3年分になります。

次に「運行指示書」です。二泊三日以上の運行をさせる様な場合には運行指示書を作成しドライバーに一部を携行させて一部を控えにする必要があります。

運行上必要な場合は必ず作成しておきましょう。保存期間は運行終了の日から一年間になります。

財務状況

あまり経理関係の帳票を監査や巡回指導で見られることは少ないかもしれません。ですが一応巡回指導時のチェック項目に入っていますので無視する訳にもいかないでしょう。

事業報告書は貨物自動車運送事業報告規則で規定されていて、毎事業年度の経過後100日以内までについて、決算状況(売上や経費)を報告する事になっています。これを怠ると監査の時に罰則の対象になります。

運賃の収受状況など経理書類のチェック、確認はしっかり行いましょう。

従業員の労働環境

最近では働き方改革やブラック企業の問題から、従業員からの通報で監査に入る事もある様です。労働時間の管理、賃金未払いなどは処分の対象になります。また運送会社は従業員に対して安全指導教育を行う義務があります。

安全指導教育はその内容をチェックされます。これは、「一般的な指導及び監督の指針」というマニュアルがあり、全12項目あります。この項目に沿って教育を毎月実施し記録しているかが問われます。

運送会社で運転手全員を毎月集めての教育は難しい事はよくわかりますが、指導義務違反も処罰の対象になりますので、何かしらの創意、工夫は必要になってくるかもしれません。

監査は監査員の非常に厳しい目によって行われます。その目的と趣旨をよく理解し対応できる様、日頃から準備をしておきましょう。

車両管理

車両の管理については

  • 車両や名義を他人に利用させていないか?(いわゆる車両の名義貸し)等は行われていないか
  • 車庫飛ばし等(登録外の車庫にトラックを置いておく事)をしていないか

をみられます。また、自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白ナンバーのトラックを保有・傭車使用)も厳しくチェックされます。

あとは基本的な事ですが、車両の整備状況も監査対象になります。「車両台帳」の整備、記入は適正に行われているか、「点検整備記録簿」については、法令に基づく定期点検基準が作成されているか?

定期点検整備記録簿に3ヶ月及び12ヶ月の記録を当該車両に備え置き、写し等を営業所に保管しているかも当然監査対象としてチェックしておきましょう。点検整備記録簿の保存期間は1年間になっています。

事業計画について

提出した事業計画が遵守されているか、以下の部分が監査の対象になります。

  • 「主たる事務所及び営業所の名称、位置」認可時、届出時と変更があった場合は所定の手続きをしているか。
  • 「営業所に配置する事業用自動車の数」経営許可申請書等に記載された車両数と実車両数が一致しているか。
  • 「乗務員の休憩・睡眠施設の位置、収容能力」変更があった場合、所定の変更手続きを取っているか。
  • 「届出事項」(役員等)届出した役員と現在の役員に相違がないか。

事業計画というと大それた事に感じるかもしれませんが、要するに会社が起業した際に提出した会社の概要部分の事を指します。営業所や車庫の住所、また、車両数等を明確に示しておく必要があるのです。

監査にパスしなかったらどうなる?

重い処罰は営業停止処分

絶対に避けたい事ですが、監査で悪質と判断された場合、営業停止処分になってしまいます。これは営業所に車両が何十台あろうとも営業停止になったら全ての車両が動かすことができません。仕事をする事が出来なくなるのです。

何台かの車両の稼働を停止させる車両停止処分と似ていますが、別の処分で格段に重い処分になります。営業停止期間については、3日、7日、14日など、違反の悪質度によって変わってくるようです。

また、処分が下るまでには数ヶ月かかり、ある意味蛇の生殺しのようになってしまいます。

軽微な違反は警告等で済むことも

監査が行われ、違反が見つかっても、その違反が軽微な場合は警告などで済む場合もあります。ただ気をつけなければならないのは、警告を受けても改善されない場合はより重い処分が下る可能性が高いという事です。

問題を放置する事は運輸局の監査員の心象を悪くして問題を大きくさせる事になりかねません。監査で違反が見つかり、警告を受けた場合には迅速に違反箇所の改善に乗り出しましょう。

コンプライアンス遵守が一番の対策

監査が行われ、違反があった場合、改善命令に従って違反項目を改善し、改善報告書を提出して、その後もその水準で運営していく事が必要になります。

先述しましたが、監査で警告を受けても改善せずに放置する事は、事態を悪化させる事になり、得策とは言えません。しっかり違反項目と向き合い、改善を行うようにしましょう。

難しい事かもしれませんが、監査に対する対策は日頃からのコンプライアンス遵守が一番という事になるのかもしれません。

まとめ

ここまでは運送会社の監査と対策について解説してきました。近年ではトラックの重大事故が多く発生して問題となり、監査や巡回指導の頻度は増加傾向にあるといいます。

そんな中で運送業者ができる一番の監査の対策は、日々の書類の整理と法令遵守になるのではないでしょうか。今回の記事が運送事業者皆様の監査の対策の一助になれば幸いです。

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