運送会社の健康診断はしっかりと行われているの?具体的な内容も解説!
運送業界のドライバーの仕事は長時間の運転や、夜間に運転したりと不規則な生活リズムが続くため、普段から健康に気を付けなければいけません。
そのため、運送会社の健康診断はどのような内容を実施しているのか気になるところ。そこで今回は、健康診断の内容を徹底的にご紹介します。
運送会社は他の会社より健康に気を遣っている?
トラックを使用して運送することは、一般の人が利用している公共の道路を使うことになるため、安全に関して特に注意が必要になります。さらに、バスの運転となると、乗客の命も預かるという大変責任のある仕事となります。
そのため、運転手が安全に運転するようにできることはもちろん、運転手の体調が悪いと安全運転に支障をきたしてしまうため、運送会社は他の会社よりも健康管理に気を遣っているとも言えます。
また、運送会社は法律で年に1回の定期健康診断を受けることが義務付けられています。
運転者の体調不良による事故の例
運転者の体調管理を怠ったために運転中に体調不良が起こり、それが原因で事故が起こったというケースも存在します。
例えば、夜行バスの運転手が運転中に意識を失い、北陸自動車道のサービスエリアで死亡事故が発生したというケースや、京都市内で乗合バスの運転手が急に意識を失い、異変に気付いたお客さんが駐車ブレーキを作動させ、あわよくば大事故につながりかねなかったというケースもあります。
さらに、トラックの運転手も体調不良による死亡事故の報告も目立っています。
全日本トラック協会に健康管理マニュアルがある
このようにトラック運転者の体調不良は重大な事故につながるため、運転者は運転中の安全確保とともに、自身の健康に関しても真剣に考えなければいけません。
そこで、全日本トラック協会は体調不良による交通事故を撲滅するために運転者向けの健康管理マニュアルを作成しました。
マニュアルの内容とはどんなもの?
では一体健康管理マニュアルはどのようなものなのでしょうか。以下で詳しくご紹介します。
健康管理の流れ
まずは健康管理の流れを見ていきましょう。
最初に事業者は社員の定期健康診断を実施し、その診断結果に異常が見つかった場合に医師から意見を聴き、運転者を仕事と日行生活の両方で健康管理を行なっていきます。
また、運行管理者による乗務前点呼に体調についてしっかりと聴き取り、乗務させても大丈夫かどうかを判断します。
注意しなくてはいけない病気
国土交通省が報告している健康起因事故のうち、脳出血や心筋梗塞が原因の事故が3分の2を占めています。そのため、運転者の健康管理は特にこれらの疾患に注意する必要があります。
特にこれらの疾患を予防するには、
- 運転と休養のバランス
- 生活習慣の改善
- 自身の自己管理
が重要です。
運転中に体調が悪くなった時の対処法
普段から健康管理に注意していても、運転者が運転中に体調が悪くなる可能性もあります。
その場合に備え、「運転中、急に体調に異常を感じた場合はどうすればいいのか」をあらかじめ運転者に伝えたり、運転中に急に体調が悪くなった時の対応マニュアルを用意しておき、無理して運転を続けてはいけないということしっかり伝えましょう。
定期健康診断を必ず受診する
運転者の健康管理を行うためには、まず健康診断を必ず受診させる必要があります。
法令によって義務付けられている健康診断は、次の3つがあります。
- 雇入時の健康診断
- 雇用後の定期健康診断
- 特定業務従業者(夜勤に従事する人など)の健康診断
深夜業に従事する場合には、6ヶ月以内ごとに1回以上定められた健康診断を受ける必要があります。
健康診断の内容はどんなものがある?
運転者が受ける健康診断はどのような内容があるのでしょうか?以下で詳しくご紹介します。
自覚症状および他覚症状の有無の検査
自覚症状は自分で感じている症状となりますが、他覚症状に関する診断は、疑いのある事項を中心として医師による問診が行われます。
その際に行う検査項目は
- 「打診」
- 「聴診」
- 「触診」
などの臨床診察的な手法であることがほとんどでしょう。
身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
健康診断で最も基本的な項目が身長、体重でしょう。この項目は後の検査で出てきた数値の基準とするため、とても大事な項目となります。
また、腹囲についた脂肪の量も確認するため、腹囲の測定も同時に行われます。さらに視力や聴力は運転者にとって重要な項目のため、毎回必ず行われるでしょう。
胸部エックス線検査および喀痰検査
胸部エックス線検査とはレントゲンで
- 肺
- 縦隔
- 胸郭
- 肋骨
- 心臓
の異常を調べる検査となります。通常は正面から撮影することがほとんどですが、心臓の裏側を調べるのに側面から撮影することもあります。
喀痰検査では、気管支の壁にある期間視線などから分泌された粘液を採取し、気管支や肺の疾患がないか検査をすることを目的としています。
血圧の測定
血圧の高い低いによって様々な病気の可能性を知ることができます。
高血圧の場合は血管に通常より高い圧力がかかり続けることになり、この状態が何年も続くと血管の内壁が分厚くなり、動脈硬化を引き起こすことにつながります。さらに、それが原因で脳卒中や心不全を引き起こす可能性もあります。
一方、低血圧の場合は、慢性的にめまいや頭痛、立ちくらみといった症状を引き起こしてしまいます。
貧血検査
貧血検査とは、血液中の赤血球の増減を調べ、多い場合は多血症や血液濃縮(脱水)、反対に少ない場合は貧血や出血を考えます。
多血症は血が流れにくくなっているため、血管が詰まりやすくなる状態のことです。また、貧血症状は運転にも大きな影響を与えかねませんので、特に気を付ける必要があります。
肝機能検査
肝機能検査は肝臓が健全に動いているかを調べることで、血液検査でわかります。
肝機能を調べる項目はたくさんありますが、健康診断で行われている基本的な検査は、
- 「ALT(GPT)」
- 「AST(GOT)」
- 「γ-GTP」
の3つでしょう。
ALT(GPT)とAST(GOT)は肝臓の細胞に多く含まれ、細胞が壊れた時に血液中に出てくる酵素のことを示しており、どちらが高いかによっても病気の種類や可能性が変わってきます。また、γ-GTPはアルコール性肝障害の指標としてよく使われます。
血中脂質検査
血中脂質検査は、血液中の
- 「総コレステロール」
- 「中性脂肪」
- 「HDLコレステロール」
- 「LDLコレステロール」
の数値を知ることができます。
これらが基準値を超えていると脂質異常症(高脂血症)の疑いとなりますが、自覚症状はあまりありません。しかし、そのまま放っておくとさまざまな生活習慣病を引き起こしてしまいます。
血糖検査
血糖検査とは、血液中の血糖(ブドウ糖)がどれくらいあるのかを調べる検査となります。
この血糖は、食事によって上がったり下がったりするため、食前に行う「空腹時血糖値」や一定量のブドウ糖を溶かした水を飲んでその後にどう血糖値が変化するのかを調べる「ブドウ糖負荷試験」、また食事の時間を考えずに検査する「随時血糖値」の3種類があります。
尿検査
内蔵の中で腎臓は無症状であることがほとんどであるため、尿検査は非常にたくさんの情報を知ることができます。尿は腎臓で作られ、尿管や膀胱、尿道を通っており、この通り道に問題があると尿に異常が現れます。
尿検査では、
- 尿蛋白
- 尿潜血
- 尿糖
を知ることができます。蛋白質、赤血球、糖分は本来、体に必要なものですが、体調に異常があると尿検査で検出されることになります。
心電図検査
心電図検査とは、心臓の動きを電気的な波形に現し、心臓の状況を把握する検査のことになります。特に心臓の活動の異常をによってあらわれる不整脈の診断には欠かすことができません。
一般的な心電図の検査はベッドに横になり、手足や休部に電極を付け、心臓の動きによって発生する電位差を受け取る仕組みとなります。
まとめ
運転手の健康は安全運転に直結し、実際運転手の体調不良が原因で痛ましい事故も起こっています。
そのため、運送会社は他の会社よりも健康診断に気を遣っており、運転手も日常から健康に気を使わなければいけませんので、運転手の仕事をするのであれば、定期的に健康診断を受け、自分の体を管理することも大切でしょう。